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害虫大辞典 日本昆虫学会名誉会長 安富和男氏 監修

害虫辞典

ハエ 

衛生害虫として問題なのは数10種のハエ
ハエは双翅目(そうしもく)の環縫センチニクバエ亜目(かんぽうあもく) に属する昆虫です。2対の翅のうち後翅は小さく退化して平均棍になり、一見1対2枚の翅に見えるので双翅目と呼びます。平均棍は音を感受します。


日本から約2600種のハエが記録されていますが、衛生害虫として問題になるのは数10種です。主なものはイエバエ、ヒメイエバエ、サシバエやクロバエ、 キンバエ、ニクバエの仲間です。
衛生上の害は
(1)病原体(消化器系伝染病の病原細菌や小児まひウイルス)の運搬
(2)吸血
(3)寄生(ハエむし症)
(4)不快感
であり、また、ハムグリバエやカラバエのような農業害虫としてのハエもいます。

191000000000000000000 匹のイエバエ
ハエの旺盛な繁殖力は産卵数のクロキンバエ多さと発育の速さにもと づくものです。外国の学者が計算した例によれば、もし繁殖を妨げるものがないと1対のイエバエからひと夏で191×10の18乗の子孫ができます。この 「ハエ算」は191の次にゼロを18つけた天文学的な数字です。イエバエのメスは1回に50~150個の卵を産み、約1ヶ月の生存期間中に4~5回産卵し ます。
卵は僅か半日から1日でふ化し、幼虫は3齢を経過して7日後に蛹(さなぎ)になります。ハエの蛹は殻に囲まれた囲蛹(いよう)です。4~5日後に羽化する 時、殻の先端が環状に開いて成虫が出てくるので、ハエの仲間を環縫亜目と呼びます。卵から羽化まで半月たらずです。
ハエの嗅覚器は触角第3節に多数分布する嗅覚孔です。触角は顔の真ん中に1対あり、小さくて目立ちませんが、食物などの匂いを鋭く感受します。ハエの好きな匂いはアルコール類(エチルアルコール、イソプロピルアルコール)、揮発性脂肪酸類(酢酸、酪酸)、エステル類(酢酸エステル、酪酸エステル)、窒素化 合物(インドール、スカトール)、、硫黄化合物(メルカプタン)などです。

さまざまな匂いに誘引される変わり者のハエたち
不思議な匂いに誘引される変わり者のハエがいます。ハマベバエは海浜に打ち上げられた海藻やカキ殻の山で育つハエです。かつて、瀬戸内沿岸の塩田で塩をつくる時の苦汁(にがり)に多数のハマベバエが集まり、誘引行動を起こす物質は苦汁に含まれているブロモホルムということがわかりました。ブロモホルムに DDVPを配したトラップが考案され、効果的な駆除に成功しました。
亜熱帯地方にすむミカンコミバエのオスはメチルユージェノールを含む植物に誘引されてそれを摂取し、体に蓄えて外敵から身を守るのに利用します。

ジャンプするウジ、人の血を吸うハエ

チーズや肉類を食害するチーズバエの幼虫はジャンプする奇妙なウジです。マウス・フックという口のかぎ状器官で腹端を挟み、それを急にはずして体をはね上げるしくみでジャンプします。ミカンコミバエの幼虫も跳躍して逃げる行動をそなえたウジです。
また、サシバエは針状の口吻で豚や牛から吸血してくらすハエで、人を刺すこともあります。